第63回 ちゅれちゅれ草

ちゅれちゅれなるままに日くらし硯にむかひて、心にうつるゆくよしな事をそこはかとなく書きつくれば、あやしうこそものぐるほしけれ。

【第一段】街中行き交う人は、老いも若きも茶髪もピンクも「歩きスマホ」はよくある事だ。別に驚くことはない。しかし手の爪を切りながら横断歩道を渡る男には驚いた。

【第二段】近頃にわかにルイボスティーを目にする耳にする。ルイボス葉のお茶で美容と健康に良いそうだ。紅茶キノコと違うのか。

【第三段】ラジオ・テレビのサプリ紹介番組。「開発動機は母の悩み。これを母に飲ますと悩みが改善、感謝された」と語る研究者。親孝行開発秘話が人体実験秘話に聞こえた。

【第四段】流行は、ちょっとわからない。厚紙にキャラクターなどを印刷した「何でこんな物が」のトレーディングカードが高額取引され、犯罪も起こる。昭和40年代はローラースケートと金属製竹馬と笑い袋だった。

【第五段】他人に意味なく年齢を尋ねたらそれはセクハラ、パワハラだ。ニュースでは一般人、有名人、性別問わず「実年齢」が公表される。個人の諸事情もあるだろうからゾウガメのように「推定年齢」ではどうだろう。

【第六段】食後は歯を磨く。飲み物だけでもマウスウォッシュで口を濯ぎたい。第一は虫歯予防だが、応急手当てで人工呼吸を受ける事態となった時の口臭予防でもある。「老いる」とはそういうことだ。

【第七段】自炊は苦でない。適当だから。ただネギ切りだけは毎回いやだ。気が重くなる。白ネギにしろ青ネギにしろ、なぜ切る端切る端まな板から落ちるのか。調理台に付いたネギはうまく取れない。イライラする。ネギ切りは人の性格をも変える難儀なものだ。

【第八段】裏の話が射的の的のように表に出ては次々と打たれる大阪・関西万博。今後は開閉会式演出も新たな的になりそうだ。世界最大級の木造建築物と胸を張る「大屋根リング」。だが完成パース図の屋根上を一周する「リングスカイウォーク」には、採光用の膜天井が描かれる。その周囲に沿ってススキや色取り取りの花が咲き、ここも歩く姿は外国人。貫工法の清水寺なら赤面しそうな「こてこて」だ。「大屋根リング」は人工海「つながりの海」の中にも柱が建つ。厳島神社の大鳥居は「金もかかるし、わざわざなぜ」と嘆くだろう。大阪・関西万博の理念は「いのち輝く未来社会のデザイン」。そうか。「つながりの海」に水鳥や渡り鳥が飛来するかもしれない。水中の柱は安らぎの場所。陸上部の大屋根梁はツバメやカラスたちの営巣地。ハトにはヘブン。来場者は糞で汚れた柱を見て「いのちを知る」。上から落ちる糞を浴びて「いのちを響き合わせる」。こうして万博のテーマ事業を鳥と人間とで共感し合う。大阪・関西万博開催意義に気づかなかった自分を恥じている。


今、真顔で言われると小っ恥ずかしい「ワード」

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