第61回 贅沢って何でしょう

清貧な生活。バブリーな生活。お天道様に照らされて歩く人生。裏街道を歩む人生。「アッシー」「メッシー」「ミツグ」くんの人材有効活用に長けたお姉さん。上場NTT株購入後ブラック・マンデー株価大暴落で、つかの間の夢に泣いたお父さん。これは日本の人口約1億2400万、ひとそれぞれ悲喜こもごもの一例です。昨年は「頂き女子りりちゃん」「ルフィ」も加わりました。

超大国アメリカは、貧富やイデオロギーの相違による国民の分断が深刻化。周囲を意識し個人の主体性をあまり表に出さない日本でも、近年大きく二つに分かれ始めています。大手・中小企業間、正規・非正規雇用者間の待遇と賃金格差。付随する教育問題の格差はどれも経済的見地から。政治に「ワラ人形と五寸釘買ったろか」とお怒りの方、「別に~」と無関心の方は選挙投票率の数字から。特に伝統的、保守的な価値観を重んずるか否かの考えは、政治やマスメディアに限らずSNS上にも広がり、国民間の感情的な対立と溝を徐々に深めています。まだ顕著に現れていないと感じるでしょうが、これらは今後日本社会の各分野に浸透し、きっと諸問題解決の大きな妨げになると思います。

さて、俯瞰から再び個々の視点に戻りましょう。この日記を読まれているあなた方も約1億2400万人の内のおひとり。そこでご教示願います。「贅沢ってなんでしょう」。ふらっとここに立ち寄ったら厄介な奴に関わっちまったと露骨に顔に出ているAさん、逃げないでくださいね。BさんCさん、「寝たふりキンチョール」は良い子が真似するのでやめましょう。

おっと忘れていました。他人に質問を投げかけるのなら、まず自分で調べてみること。考えてみること。「贅沢」をインターネットで検索してみます。やはり「金」「物」に関する項目が、上から下まで、ずずずい~っと並びました。お菓子、ビール、ハム、お茶漬け‥‥。「贅沢」を謳った食べ物、飲み物ばかりですが、どれも「贅沢」な味の想像がつきません。高級車、高級時計、高額旅行 ‥‥。これはただ「見ぃ~てぇ~る~だけぇ~」。少し広げると楽天市場で『贅沢は敵だ 立川女子モンペ部隊』戦時標語布レプリカを売っていました。さらに昔も「贅沢」はあったようです。古典『徒然草』から引用し「贅沢」の古語「きよら」を、広辞苑無料検索で解説していました。

特定の人の「贅沢」も挙げてみます。個人情報に該当しますが既に公にされているので、たぶん問題はないと思います。「赤毛のアン」と揶揄されるアン・シャーリーさんの「贅沢」は、膨らんだ袖のパフスリーブのドレス。養父マシューからクリスマス・プレゼントでもらったアンさんの喜びのコメントです。「ああ、どんなにお礼を言っても、言いたりないわ。まあ、この袖をみてごらんなさい。あんまりうれしくて夢の中にいるようだわ」(※1)

「贅沢って何でしょう」。六麓荘町や松濤に古くからある風格ある豪邸は、一般人からは手の届かぬ「贅沢」の象徴。しかし代々ここに住む資産家の方々は(所得税・住民税・固定資産税・相続税はいかほど)これが「日常の生活」でしょう。身に着ける高級ブランド品も主役の「私」を引き立てる、さりげなく、エレガントな装いだと想像します。広島市内で目撃するのは「高級ブランド品」が歩く姿です。私も高級ではありませんが、学生時代に地元の小さな洋装店で親が買ったブランド服を着ていました。ロゴマークが持ち手のついた傘、頭にトサカのあるペンギン、舌が黒いワニ、煙が2つしか出ないパイプ。服に詳しい友人が「知らんのか、恥ずかしいの」と冷笑しました。結局のところ「贅沢」とは、その言葉が与える堅い印象より、人の考え次第でいくらでも変わるもっと「緩い」ものなんですね。

最近の洋画はシネコンではなく〇〇系全国順次公開、いわゆるミニシアター系公開作品が増えています。かつての単館時代なら、大劇場で全国一斉公開と思える作品も「日本公開されるだけでもありがたや」の時代。公式サイトで見る上映予定劇場は、きっと各地の映画ファンに支持された熱い劇場なのでしょう。ここに広島市の「序破急」経営「サロンシネマ」「八丁座」が加わります。最高の劇場立地とホスピタリティ。閉館した劇場を大規模リノベーションした館内設備は、以後も適宜更新されています。床の高さにまで配慮したオリジナル座席、シネコンの中規模シアタークラスはある画面サイズ、アップデートされる音響。お便所には一輪挿し、ロビーには遊び心が。

限られた設備と環境のミニシアター系劇場が多い現状で「サロンシネマ」「八丁座」の存在は‥‥‥。それは私の「贅沢」でした。

(※1) 出典『赤毛のアン』モンゴメリ著 村岡花子訳 (新潮社)


「贅沢は敵だ」動物園にて

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