第60回 吸血鬼と議員の卵

「若い子おらんかぇ~。血吸うたろかぁ~」。「きゃ~、このご時世に吸血鬼~。助けて~」。「ちゅ~ぅぅ。うわっ!! 大麻グミの味!!。まずっ。ガタイの良いあいつはどうだ?」。「ディフェンスを右ステップでかわして前進し、えっ、なんで吸血鬼が。ギャャャ~」。「おえっ!! こいつの血、ミックス覚醒剤。次はあの娘」。「ふわふわ~ふわふわ~。コンタックくださぁ~い。パブロンゴールドAくださぁ~い。あっれぇ~おじさん吸血鬼?。マジウケる~」。「そうさ、本物だぞ。おとなしく吸われろ。ガブッ‥‥。めちゃくちゃオーバードーズの血やないかい。今度は向こうのカップルだ」。「みゆたん可愛い~い」。「ゆーにゃんカッコい~い」。「みゆたん世界で一番うちゅくしぃ」。「みゆに甘えるゆーにゃん、宇宙で一番かわちぃ」。「みゆたんちゅき」。「ゆーにゃんちゅき」。「ガブッ、ガブッ。おっお前らファストフードばっかり食ってるな。糖尿病の血だぞ。若い子はまともな血がおらんのか。ならミャクミャクの側にいる中年市長はどうだ。ガブッ」。「うんうんうんうん」。「ガブッ」「うんうんうんうん」。「ガブッ」「うんうんうんうん。万博大屋根『リング』の建設意義は、国民に貞子を見てもらうためです」。「ぺっぺっ、これもダメ。脈が不整脈の血だ。ぶつぶつ言ってるあいつはどうだ」。「国民の皆さまにお示しし、丁寧に説明します。仮定の質問に対し、お答えは差し控えさせていただきます。うん、これで完璧」。「こんにちは。吸血鬼です。血吸うたろかぁ~」。「お断りします。吸血鬼になんかなりたくありません。僕は政治家になりたいんです。政党候補者公募の面接がこれからあるんです。行かせてください」。「ならば聞こう。お前がさっき言っていたことに対してだが、仮定の質問とは疑問に感じたことを問うのであって、それに答えるのが丁寧な説明だと思わないのか」。「‥‥‥ そう思います」。「だめだ!! 何まともな考え方をしている。面接に落ちるぞ。いいか。何度質問されても白々しく『個々の政治団体に関するお尋ねには、政府の立場としてお答えは差し控える』と、誰かに憑依されたように押し通す、普通ならお友達になりたくない人が採用なんだ」。「僕は子どもたちに嫌われる、ピーマンとゴーヤになるんですか」。「そうだ。子どもたちが大好きドラえもんとピカチュウに、お前はもうなれない。その覚悟はあるか」。「はい」。「政界は『それいけ!アンパンマン』と真逆の倫理観だぞ。それでもやれるのか」。「はい」。「わかった。もういい。お前の血は吸わん。行け」。「ありがとうございます。面接がんばります。本当にありがとうございました」。「‥‥吸血鬼のオレが、人間のあいつと妙にシンパシーを感じたのはなぜだ‥‥‥。ん?なんだコウモリ2号」。「キィキィキィ」。「なるほど、そういうことか。税という血を吸うのが政治家の生業。我ら吸血鬼族と同類なのか」。「キィキィキィー (オチがついたところで、これにてー)」。

【ゴーストライターX・大門未知夫のご挨拶】皆さま。いつも貴重な時間を割いて、なんの特にもならない「昭和の香り日記」をお読みいただきありがとうございます。今年最後の日記『吸血鬼と議員の卵』は、皆さまの琴線に触れたでしょうか。さて少し真剣な話をします。昨今政界において、日本国憲法改正を押し進めていることはご存知だと思います。現状の国会勢力では憲法改正案の事実上の基となる、2012年に自民党が発表した「日本国憲法改正草案」。現憲法と対照し、全文がネット上に掲載されています。既読の方もおられるでしょう。考え方と感想は人それぞれですが、私は一読し、怖いです。文面はソフトで内容はハード。ざっくりとした感覚では「国家が権力で国民を管理し、各々の家庭の有り様にまで介入する」憲法です。慌ただしい師走ですがまだの方は一度目を通されることをお勧めします。21世紀に生きる私たちに、19世紀の将来が示されています。


吸血鬼界の食べログ 

日記第60回.jpg

この記事へのコメント