第19回 キャッツ 〜おバカな猫〜

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これは、私が中学3年の頃から自宅で飼い始めた、首輪が嫌いな黒白のオス猫です。名前はヴォルデモート(仮名)。いつも「ニャー」としか鳴きません。向かいの老夫婦宅の扉が開いていると勝手に上がり込み、和室で座る妻の眼の前を横切りながら、「ヴォルデモートや。」「ニャー」「暑いね。」「ニャー」と交わし、中庭に出て行ったそうです。皆がとても可愛いがってくれました(ただし父は除く)。

ヴォルデモードは、飼い主の立場からは「おバカな猫」でした。隣の家の前には、町内の養豚業者が回収して廻る残飯缶が置いてあり、私の家も残飯を捨てていました。きちんと食事は与えていたのに、その残飯缶に後ろ足で立って、頭を突っ込んでヴォルデモートが食べていたのです。下校時で一緒にいた友達も「ヴォルデモートが残飯食べよる」と、驚いていました。

オス猫は、外出したら数日間戻って来ない事があると聞いていましたが、実際に10日間以上戻らない時がありました。父は「死んだ死んだ」と断言しました。ところが徒歩15分位の家で、名前を付けてもらい(首輪もはめて)飼われていたのです。偶然にも母の友人がその隣に住んでいて、飼い始めの時期を確認し、名前を呼びかけてヴォルデモートではと電話をくれました。名残惜しそうにするその家の人に、お礼とお詫びを述べて私が連れて帰りましたが、父は不機嫌でした。後日、母があらためてその家にお詫びに伺いました。

私は、かねてからヴォルデモートに試したい事があったので、それを実行してみました。三面鏡の正面に座らせ、残りの二面も閉めて中に閉じ込め反応をみる。予想では鳴き叫び暴れるはずでしたが、「ニャー」すらもありません。怖くなって開けたらフリーズしていました。

「おバカな猫」ヴォルデモートとの別れは、思いのほか早く訪れます。4年目の時でした。ケンカは弱いのに縄張り意識が強いから、いつも傷を負っていましたが、ついに顔半分を腫らして戻ってきたのです。それでも翌日、いつものように外出し、いつものようには戻ってきませんでした。

何日後かは覚えていませんが、夜、台所に一番近かった私の部屋に、ヴォルデモートがよく棚の上の電子レンジから床に飛び降りていた時の「タンッ」と同じ音が聞こえてきたのです。毎晩、ほぼ同じ時間に7日間位続き、音は止みました。両親に話すと母は「死んだ事を知らせに来たんかね」と言っていましたが、父は一言「バカバカしい」でした。

そんな思い出のある昔の実家は、今、高速道路の土盛りの下にあり、時々その上を、私は走り抜けています。


ヴォルデモートと私(コラージュ加工)

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