第17回 ローカル・ウォーズ

A long time ago   と言っても約半世紀前、 far, far away  せいぜい広島市街地から40キロ圏内。山すその平屋建てに両親と兄妹が住んでいた………。


エピソード1 『恐怖のおもちゃ箱』

兄の住む家の前には生活排水が流される小川があった。排水は、夏に蛍が舞う近くの川に注がれていた。裏庭は以前飼っていた金魚・ミドリガメ・色つきヒヨコの墓が並んでいた。兄はこの庭でよく遊び、お昼寝もした。一角には木製の元ミカン箱が置いてあった。箱の中には外用のおもちゃが入っていた。兄はいつものように今日遊ぶおもちゃを選ぼうと上から取り出していたら、とぐろを巻いたヘビが寝ていたのだ。兄は叫び声をあげて家の中に戻った。翌日、おもちゃ箱は破壊された。

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エピソード2 『恐怖の押入れ』

「恐怖のおもちゃ箱のヘビ」に敗れた兄は、ヘビとの共存共栄を受け入れた。「青大将」「マムシ」子供のマムシ 「ハミ」 も見かけたら、先に兄から逃げていた。小川を挟んだ向かいには、一組の老夫婦が住んでいた。夫は「ヘビ取り名人のお爺さん」であった。玄関には、焼酎瓶の中からじっと見つめるマムシがいた。夏の夜、兄の楽しみは蚊帳に入って寝ることだった。そこを「秘密基地」と呼んでいた。蚊帳と布団を収めた押入れの襖扉には、破れた穴があった。夕方の6時頃は外はまだ明るいが、兄は「秘密基地」作りを始めた。蚊帳を出しタオルケットを取り出していたら、とぐろを巻いたヘビが寝ていたのだ。兄は叫び声をあげ隣室の父を呼んだ。父は何も出来なかった。兄は「ヘビ取り名人のお爺さん」を呼びに行った。お爺さんは事も無げにヘビを捕まえ「わしが貰う」と持ち去った。「押入れのヘビ」との戦いに完敗した兄は、それからはヘビを目撃するたびに、はばかることなく「ヘビー」と絶叫する人へと変わってしまった。

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エピソード3 『恐怖の貫通路』

ヘビとの戦いも終わりほどなくして、兄は家族と広島に出かけた。最寄りの国鉄駅には普通列車しか停車せず、蒸気機関車に引かれた客車が走っていた。速度も遅く、乗車時間が子供には長く感じられた。兄は車内探索を思いつき、前の車両に行こうと貫通路前の扉を開けた。恐ろしい光景であった。前の車両とこちら側の間はむき出しで、転落防止用の鎖が左右1本づつと、列車の揺れに合わせ上下左右に動く重ねた鉄板の渡り板だけであった。横からは外の景色が、足もとからは線路が高速で過ぎ去ってゆく。兄は先に進めなかった。ここでも恐怖に敗れたかと思えた。しかし、貫通路が幌で覆われた中古の湘南型電車が広島間で走り出し、兄は前の車両に進む事が出来たのだ。兄は勝ったのだ。決してズルではない。

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