第8回 未完成の百貨店
今日の日記は、少し重苦しい内容です。トイレに行きたい方は、先にすませてからお読み下さい。
各地域の顔となる百貨店が、たて続けに閉店していきます。特に地方では、百貨店の閉店が中心部の衰退をより加速させ、深刻な事態を招いています。この現状に、かつてこの場所が華やかでハレの場であった時を知る後期高齢者・昭和中期生まれ世代にとっては、やるせない思いかもしれません(気分がすぐれませんか)。中国地方5県の百貨店も閉店や売上減少がとまらず、ピーク時から半分近くまでに落ち込んだ店舗もあります(ちょっと待って。救急車の前にまずは#7119で相談を)。
広島の顔は「福屋八丁堀本店」でしょう。売上高が減少傾向の中、昨年創業90周年を迎え、伝統と格式を長く保ちます。原爆の被害も受けましたが、焼け残った本館は今も「被爆建物」として使われています。本館と接続した東館は、もとは8階に松竹系映画館の入った東洋座ビル(その後福屋が買収)であったため、松竹系が閉館後は、現在ミニシアター系「サロンシネマ」で全国にも知られる「序破急」が館内設備を刷新し「八丁座」として運営しています。単独の百貨店で、これほどの規模の映画館があるのは、おそらく「福屋」だけでしょう。
「福屋八丁堀本店」は、ファッション・ミュージアムを標榜する「伊勢丹新宿店」のような大百貨店と比べて、売り場面積、豪華さ、商品の品揃え等で見劣りするかもしれません。でも、ここには「凛」とした空間と「ほっとする親しみ」があります。館内の至る所に一人掛けの椅子を置いたのも、10年以上前からだと思います。売り場やブランドショップの定期的なリニューアルだけでなく、外からも見えた屋上塔屋部分の設備機器を、建物と一体化する様に美しく覆い、館内照明をLEDに変えた時点では高級ホテルのように落ち着いた少し暗めの電球色だったのが、数週間内には全体をより明るめに変えていました。もしかしたら、商品が見えにくかったのかもしれません。この他にも柱の装飾、1階の東館と本館の廊下間にある搬入口通路扉の美粧化等、直接的な売り場以外の場所にも目を配り、常にどこかを改修、手を入れています。「福屋八丁堀本店」の高級感は、こういった姿勢から来ているのかもしれません。私は小さい頃の思い出がいっぱい「未完成の百貨店」をこれからも大切にして、店作りのお手本にします。
各階バイヤーお薦めの逸品
8階 催し物会場『里山の物産展』から
4階 呉服・婦人服売り場 から
2階 海外ブランド靴売り場 から
地下1階 食品売り場 から
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