第4回 乗り物大好き その1 船が好き篇
第4回 乗り物大好き その1 船が好き篇
1972年アメリカ映画『ポセイドンアドベンチャー』オープニング。ジョン・ウィリアムズのメインテーマが流れる中、嵐の海を航跡を残し前進する豪華客船ポセイドン号。俯瞰のカメラが、大きく揺れながら旋回するポセイドン号へと徐々に近づいてゆく。
往年の豪華客船クイーン・メリー号(8万1千トン)をモデルにして精巧に作られたミニチュアのポセイドン号は、さまざまなアングルで劇中に登場します。冒頭とは一転、快晴のもと3本の煙突から煙を出し航行する上空からのショット。大晦日の夜、煌々と輝く船体側面からのショット。
「ポセイドン号、ぶちかっこええ」
でもポセイドン号は、大津波で転覆してしまいます。
公開当時小学5年生の私は『ポセイドンアドベンチャー』にカルチャーショックを受け、映画とポセイドン号に夢中になりました。地元のプラモデル屋さんでクイーン・メリー号のプラモデルを買い、面倒な塗装はせず白い船体のまま手で畳の上を滑らせ、一人ポセイドン号ごっこをしていました。きっと感受性豊かな子供だったに違いありません。学校でもよく教室で『ポセイドンアドベンチャー』の事を友達に話していました。きっと迷惑な子供だったに違いありません。でもある日クラスメイトが、学校の図書館に置いてある一冊の本を教えてくれました。書名は『SOSタイタニック』。
甲板を逃げまどう乗客の写真。ピストルを上空にかざし威嚇する乗組員の写真。衝撃的な写真が本文に沿って出てきます。1958年イギリス映画『SOSタイタニック /忘れえぬ夜』を基に子供向けに小説化したものでした。奇しくも土曜深夜枠の映画劇場でテレビ放映があり親に頼み込み、条件付きで観れました。親が出した条件は二つ。一つ目、その日の『8時だヨ!全員集合』は見てはダメ。二つ目、映画が始まるまでは寝る事。
初めて見た、動くタイタニック号。ヨットのようなシャープで優美な外観。背後に傾いた4本の細長い煙突。
「タイタニック号、ぶちかっこええ」
でもタイタニック号は氷山に衝突、沈んでしまいます。地元のプラモデル屋さんにはプラモデルがありませんでした。
『SOSタイタニック/忘れえぬ夜』は今観ても優れた作品です。2時間弱の白黒映画ですが、有名なジェームズ・キャメロン監督版『タイタニック』と比較してもスケール感を含め遜色ありません。むしろ災難シーンを中心とした無駄のない構成で、高い緊張感が続いたまま終結へと進みます。船尾を高く上げ、静かに海中に没するタイタニック号。
しかし最新の資料に基づき、非情なキャメロン監督は船を真っ二つに折り、凄惨なタイタニック号の最後を描きました。合掌。
きっかけはハッキリと覚えていませんが、旧帝国海軍航空母艦「赤城」も大好きな「船」でした。広島ですので小学1年生から原爆・平和教育を受けており、空母も兵器と分かってはいました。でも、船首と船尾の、船体と飛行甲板との間隔が広くあいた独特のフォルムが「ぶちかっこええ」。
祖母にクリスマスプレゼントとして、地元のプラモデル屋さんで「赤城」のプラモデルを買ってもらいました。高校生の頃はウォーターラインシリーズで真珠湾攻撃時の南雲機動部隊を作るため「赤城」を含め6隻の空母を買いましたが、既に不器用を自覚していた私は組み立てず、その後も屋根裏にしまったままです。
多くの映画でも「赤城」は登場しました。特に1970年アメリカ映画『トラ!トラ!トラ!』では、荒れた海を進むミニチュアの「赤城」船首が印象的です。今年の9月にはローランド・エメリッヒ監督『ミッドウェイ』が公開予定です。内容を含め、これまでも「とかく」のエメリッヒ作品ですが、実は人間の演出がきちんとされているためか、ときどき観たい不思議な作品群です。CGもリアルになりすぎず、またアニメーション的な見せ方もせず、アナログ感を残した映像作りで、ドラマとのバランスが取れている事も、何度となく観たくなる理由かもしれません。現在の日本映画は、乖離したドラマとCGが高いアピールポイントです。
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