第3回 音のある風景

ノルディックサウンド広島 7月11日

ドドーン、バーン。夏の花火大会の音。

チリーン、チリーン。夕凪が終わった風鈴の音。

ゲッ、ゲッ、ゲッ。水を張った田んぼからは、カエルの鳴き声。

音の響きで、様々な風景と記憶が蘇ってきます。「ポットン」も、そのひとつなのでしょう。思い出したくもないのに蘇る、あの場所、あの臭い。

国鉄時代の最寄り駅の、あの場所。各地の有名観光地にも数多くあった、あの場所。昔の実家の記憶には、あの場所と、天井からハエ取り紙が吊り下がった食卓の風景が加わります。

学生時代では、夏休みに、汲み取り補助のアルバイトとして働いた「ポットン」が忘れられません。バキュームカーに同乗し、清掃職員二人について市内各戸を回りましたが、とある不在宅での事。戸外にある便槽のすぐ横に不明な壺がひとつ、置いてありました。

壺の蓋を開け中を確認し、どうもこれを汲み取ってもらいたいのではないかと、ホースを入れたところ、キュウリとナスが現れました。壺はぬか床でした。なぜあのような場所に置いてあったのでしょう? 今も疑問です。

実家も新築移転して、家から「あの場所」が消えました。少なくとも街中では「あの場所」を見掛ける事はありません。それでも私には「ポットン」の響きが強く残っています。このまま、もし認知症になってしまうと、私は周囲の人に繰り返し話しかけているのでしょうか?

「あんたの、ポットン、知らんじゃろうが」

悪夢です。

fb_3_1.jpg



この記事へのコメント